Bristol Myers Squibbは2026年7月20日(現地時間)、ライフサイエンス業界で最も先進的なAI工場を構築すると発表した。これは、8基のDGX Vera Rubin NVL72システムを基盤とする2台目のNVIDIA DGX SuperPODとなる。同社は、研究者へのAIプラットフォーム提供を拡大し、創薬パイプライン全体での利用を加速させる方針を示している。
この新たなAIクラスターは、置き換えられるインフラと比較して、メガワットあたりの性能を最大10倍向上させる見込みです。Bristol Myers Squibb (BMS) は、NVIDIA BioNeMo Agent Toolkitを含む統合AIプラットフォームを研究者に提供し、予測実行、モデル訓練、エージェントワークフローを創薬パイプライン全体で活用できるようにします。これにより、同社の研究者は、より高速なサイクルと広範な化学空間の探索に注力できるようになります。
BMSは既に約3年前からDGX SuperPODを運用しており、標的同定におけるAI活用により、手作業で数週間かかっていた作業を削減することに成功しています。AIはCELMoD化合物ライブラリの拡張にも利用され、血液がん治療など幅広い疾患に対する新たな標的と潜在的な薬剤の特定を可能にしました。また、リード最適化段階では、Payal Sheth氏が「Predict First」と呼ぶ手法を用いて、設計予測に基づき実験的な選別を行うことで、有望な分子の合成を優先しています。
BMSの研究ビジネスインサイト・テクノロジー担当バイスプレジデントであるErin Davis氏は、同システムが「あらゆる科学者」に開放され、待ち時間や利用制限がないことを強調しています。既存のDGX SuperPODと新たなDGX Vera Rubin NVL72システムは、NVIDIA Mission Controlを介して管理される統一された環境を構成し、世界中のBMSサイトからアクセス可能となります。この統合された環境により、Lawrenceville, New Jerseyで生成されたデータセットがSan Diego, Californiaのチームに活用されるなど、組織全体の学習ループが強化されるとしています。
日本のテック実務者への示唆
本発表は、ライフサイエンス分野におけるAIインフラの進化を示唆しており、日本のテック実務者にとって以下の点が行動指針となり得ます。
- AIインフラの費用対効果分析: AIインフラ導入に際しては、単なるスペックだけでなく、メガワットあたりの性能向上率を重要な評価軸と捉え、既存インフラとの比較で投資対効果を最大化する視点を持つべきです。特に消費電力あたりの計算能力に着目し、HPC投資のROI評価に組み込むことが推奨されます。
- 専門領域向けAIツールキットの検討: 創薬や材料科学など、特定の専門領域におけるAI活用を検討する組織は、NVIDIA BioNeMo Agent Toolkitのような統合プラットフォームの機能性、拡張性、既存ワークフローとの統合可能性を評価し、導入による研究開発の加速効果を検討する必要があるでしょう。
- 計算予測先行型アプローチの導入: 製薬や化学産業に限らず、製品開発や最適化プロセスを持つあらゆる組織は、「Predict First」に代表される計算予測先行型の手法が、実験コスト削減と開発期間短縮にどのように貢献するかを分析すべきです。シミュレーションやAIモデルによる事前評価を強化することで、物理的な試行回数を減らし、資源の効率的な配分を実現できる可能性が高いです。
- 異業種への応用シナリオ探求: AI駆動型の研究開発プラットフォームは、製薬・化学分野に留まらず、新素材開発、エネルギー、製造業における設計最適化など、広範な産業における課題解決に応用可能と見られます。自社のコア技術やデータ資産とAIを組み合わせることで、新たな価値創造の機会を模索することが重要となります。
参考: NVIDIA Blog (AI) — 2026年7月20日 19:59 (JST)
原文ハイライト"life science industry’s most advanced AI factory on NVIDIA Vera Rubin"