Waymoは2026年6月10日(現地時間)、デルフト工科大学(TU Delft)と共同開発した人間行動モデル「ReD(Reference Driver)」に関する研究が、科学誌Nature Communicationsに掲載されたと発表した。ReDは能動的推論(active inference)フレームワークを用い、人間の衝突回避行動をモデル化することで、自動運転システムの安全性を人間基準で評価する新たなベンチマークとして機能する。
ReDモデルは、Waymo Driverの衝突回避能力を評価するために用いられる。このモデルは、人間の運転行動を「驚きの最小化」として捉えるという中心的なアイデアに基づき、先行するNIEON(Non-Impaired driver with Eyes ON the conflict)モデルと同じ予測処理フレームワークを基盤としている。
ReDは、状況が変化する中で人間ドライバーが信念を更新し、他の道路利用者の意図に関する不確実性を管理し、ブレーキング、回避、またはその組み合わせといった回避行動を選択する、クローズドループの認知プロセスをシミュレートする。これにより、従来のモデルが重視する直前の反応的な回避行動だけでなく、有能なドライバーが潜在的なリスクを予測し、衝突に陥ることを避けるための能動的回避もモデル化できる。このモデルはさまざまなシナリオや環境に適用可能で、他のドライバーの意図が不明瞭な状況でも機能する。
デルフト工科大学助教のアルカディ・ズゴニコフ氏(Arkady Zgonnikov)は、能動的推論に基づくモデル化が人間の衝突応答の全体的な表現を可能にし、以前は大規模な自動化が不可能だった、より人間らしいベンチマークを提供すると述べている。能動的推論の提唱者であるカール・フリストン氏(Karl Friston)も、この研究は能動的推論が設計された目的に合致しており、自律システムに状況認識と情報探索能力をもたらすものだと評価した。
ReDの強力な側面の一つは、その拡張性にある。神経科学の第一原理に基づいて構築されているため、衝突回避以外の幅広い道路利用者の行動、例えば適応的なドライバー行動や道路利用者間の相互作用のモデル化にも拡張可能である。手動のルールや人間によるアノテーションに依存せず、完全に自動化されているため、数千のシナリオを持つ大規模なテストセットへの適用も可能である。WaymoのChief Safety Officerであるマウリシオ・ペーニャ氏(Mauricio Pena)は、有能な人間の応答の参照モデルを確立することで、衝突回避行動を評価するための科学的に根拠のある共通のアプローチへと業界が向かうのを助けられると述べている。
Waymoは現在、研究者、規制当局、SAEのような標準化団体と協力し、自動運転車(AV)評価における運転行動参照モデルの適用に関する合意形成を進めている。研究コードは非営利ライセンスの下で公開され、学術研究や教育、科学出版物でのベンチマーク利用が許可されている。