スタンフォード大学の学生記者テオ・ベイカー氏が、大学とベンチャーキャピタル業界の複雑な関係を深掘りした著書『How to Rule the World』を2026年5月19日(現地時間)に発売した。TechCrunchが前日18日に報じたところによると、ベイカー氏は大学入学後の初学期に、当時のマーク・テシエ=ラビーニュ学長の辞任に繋がるスクープ記事を発表し、ジョージ・ポーク賞を受賞している。今回の著書では、彼が在学中に目の当たりにした大学の内部事情が詳細に明かされている。

ベイカー氏の調査は、ウェブサイト「PubPeer」に投稿された、学長が共著者であった論文における画像の不規則性に関する指摘から始まった。この初期報道から約10ヶ月にわたり調査が拡大し反発が強まる中、当時の学長は辞任するに至った。その間、ベイカー氏には記事発表前に調査を止めようとする警告や、学長の代理人からの法的対応の動きもあったという。

著書『How to Rule the World』は、ベイカー氏がStanford inside Stanfordと呼ぶ大学内の隠れた実態に焦点を当てている。これは、将来の起業家候補とされる学生が早期に選抜され、限定されたリソースや強力な人脈へのアクセスが与えられる仕組みだとされている。ベイカー氏はこのシステムが、億万長者になることを目指すwantrepreneurs(起業家志望者)と、真の潜在力を持つ「builders(建設者)」という二つのタイプに学生を選別していると述べている。このような選別メカニズムは、スタンフォード大学独自の文化を形成し、特定のキャリアパスへの道を舗装しているという。

同書では、『How to Rule the World』という名前の「秘密のクラス」についても触れられている。これはシリコンバレーの著名なCEOが教える非公式なセミナーで、学生たちはコース単位を得られないにもかかわらず、選ばれた者だけが参加を許される一種のステータスシンボルとなっている。このクラスは、大学が公式には認めていないものの、学生間のヒエラルキーや将来の機会に大きな影響を与えている。さらに、ベンチャーキャピタルが上級生を雇用し、有望な新入生を発掘するような「才能抽出」の仕組みも存在するとされる。これは、大学が公式に推奨する教育プログラムとは異なる、非公式な人材育成と選抜の場が学内で機能していることを示唆している。

ベイカー氏はまた、自身の大学入学時期が、仮想通貨取引所FTXの崩壊と、生成AI「ChatGPT」の登場がほぼ同時期だったと指摘している。仮想通貨への熱狂が収束する中、急速に多くの人々がAIを新たなブームとして捉え、過去に急速な成功を収めた者たちと同じ高みを目指そうとしたと語った。これは、大学内におけるベンチャーキャピタルへの関心や起業志向が、常に最新のトレンドに影響されやすい環境であることを示している。


参考: TechCrunch Funding (アーカイブ) — 2026年5月19日 14:50 (JST)

この記事をシェア
X はてブ LinkedIn