『The Lean Startup』の著者エリック・リース氏が、レニーズ・ニュースレター(Lenny's Newsletter)が公開した「レニーズ・ポッドキャスト(Lenny's Podcast)」に出演した。氏の新著『Incorruptible』で提唱する、企業が時代を超えて存続するための戦略を詳述。株式公開後の創業者退任や、企業ミッション保護のためのガバナンス重要性が議論され、短期成果にとらわれない持続的成長の経営哲学が示された。(2026年5月10日(現地時間)発)

エリック・リース氏は2026年5月10日(現地時間)、多くのベンチャー企業が経験する皮肉な現実を指摘した。それは、外部からの支援を受けて成長し、株式公開(IPO)という成功の節目を迎えた創業者のうち、実に80%がIPO後3年以内にCEOの座を追われるという実態である。この数字は、企業が成長の途上で直面する内部および外部からの圧力の大きさを浮き彫りにしている。

同氏は、企業が成功を収めた後に、その核となる価値観や創造性が希薄になり、最終的には凡庸な状態に陥ってしまう現象を金融の重力(Financial Gravity)と称し、警鐘を鳴らしている。この「金融の重力」とは、短期的利益を追求する株主の圧力、市場の期待、あるいは企業が肥大化する過程で失われる初期の熱意といった複合的な要因によって、企業が本来持つべき価値やミッションを見失い、破壊されていく過程を指す。成功が企業をより大きな標的にし、その成功が自動的に保護されるわけではないというリース氏の考えが、この概念の根底にある。

こうした課題に対処するため、リース氏は、AnthropicやCostco、Novo Nordiskといった、特定のガバナンス構造を採用することでそのミッションを強力に保護している企業の例を挙げ、その重要性を強調した。これらの企業が持つガバナンス構造は、株主価値の最大化だけでなく、企業の長期的なビジョンや社会的な使命を優先させる仕組みを内包している。特に、ミッション志向の企業が、外部からの短絡的な圧力に屈することなく、ガバナンスを通じてその本質的なミッションを守り抜くことで、持続的な成長と大きな利益を享受できると、リース氏は力説した。

また、企業が危機に瀕した際に、その存続を左右する可能性を秘めた「2ページからなる簡潔な法的書類」の存在にも言及した。これは、創業者の理念や企業のミッションを法的に保護し、短期的な売却や経営権の奪取から守るための一種の防衛策としての役割を果たすものとみられる。具体的な内容は多岐にわたるが、企業の目的を定款に明記し、特定の行動を制限する条項などが考えられる。これは、企業が成功の罠に陥ることなく、設立時のビジョンを長期にわたって維持するための、実用的かつ強力なツールとなり得る。

リース氏の新著『Incorruptible』は、企業が一度成功を収めると、その成功自体が新たな脆弱性を生み出し、買収の標的となったり、短期的な利益追求に駆り立てられたりするリスクに直面するという洞察を提供している。この書籍は、現代の企業が直面するこうした課題に対し、いかにして誠実さとミッションを保ちながら成長を続け、時代を超えて存続する強靭な組織を構築するかについて、具体的な戦略と哲学を提示している。


参考: Lenny’s Newsletter (アーカイブ) — 2026年5月3日 21:30 (JST)

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