MedPAO-Assistの研究開発チームは10月17日(現地時間)、医療画像診断レポートの構造化を支援するエージェント型AIフレームワーク「MedPAO-Assist」を発表しました。従来のクラウドベースの大規模言語モデルに依存せず、エッジ環境での動作に特化。データプライバシーの確保とオフライン運用を求める医療現場のニーズに応え、口述や音声コマンドから直接、標準化されたレポート生成を可能にします。
これまでの放射線レポート構造化ソリューションは、主に大規模言語モデル (Large Language Models、LLM) を利用してきましたが、その多くは専有的なクラウドベースモデルか、高性能なグラフィック処理ユニット (GPU) を必要とする大規模なオープンモデルに依存していました。これらの制約は、機密性の高い医療データの取り扱いにおけるデータプライバシーの懸念や、インターネット接続が不安定な環境での利用制限、高コストといった重大な課題を臨床現場にもたらしていました。
MedPAO-Assistは、これらのボトルネックを解消するため、エッジ環境への展開を可能にする設計が最大の特徴です。このシステムは、標準的なノートPCのCPU上で動作し、最大で約3.3GBのRAM消費に抑えられています。非同期・マルチスレッド実行パイプラインを通じて、口述入力から最終的なレポート生成まで、エンドツーエンドの平均処理時間は約31秒を実現します。
現在、MedPAO-Assistは、胸部X線、胸部CT、腹部CT、脳MRIという4つの主要な画像診断モダリティをサポートしています。約0.6Bパラメータ範囲の小規模言語モデル (Small Language Model、SLM) を活用しており、パイプライン全体を実行する初期のエージェント型システムの一つとして位置づけられます。そのマルチエージェントアーキテクチャは、Extract-Ground-Generateパラダイムに基づいて構築されており、概念抽出、SNOMED-CTグラウンディング、構造化レポート生成という段階を経て進行します。
最終段階として、音声によるヒューマン・イン・ザ・ループ修正フェーズが設けられているため、キーボード入力や外部アプリケーションプログラミングインターフェース (API) 呼び出し、インターネット接続が不要な「no-touch」なレポート作成ワークフローが確立されます。これにより、医療従事者はより直感的にレポートを修正・完成させることが可能となります。
このシステムは、概念抽出、オントロジーグラウンディング、概念分類といった各パイプラインステージで個別に評価されています。ハードウェアプロファイリングの結果は、CPUのみでリアルタイムでの臨床展開が可能であることを実証しました。本研究は、MICCAI Workshop Agentic AI for Medicine 2026で採択されており、論文の著者には、シュリシュ・シュリナス・ヴァイディヤ (Shrish Shrinath Vaidya) 氏、ミンミニ・セルバム (Minmini Selvam) 氏、ガナパシー・クリシュナムルティ (Ganapathy Krishnamurthi) 氏らが名を連ねています。
参考: arXiv cs.AI — 2026年10月21日 13:00 (JST)