Lenny's Newsletterは2026年10月13日(現地時間)、スタートアップが長期的な競争優位性、すなわち「堀 (moat)」を保持しているかを評価するためのフレームワークを公開した。共同執筆者のダン・ホッケンマイヤー (Dan Hockenmaier) 氏とともに、AI時代において企業が競争激化の中で生き残るために必要な「複合的な優位性 (compounding advantages)」の特定方法を示している。これは、働く企業を選択する際の重要な基準の一つになると述べている。

多くのスタートアップが「宝くじ」のようなものと見なされ、成功企業の予測は不可能だという見方が存在すると、Lenny’s Newsletterは指摘している。しかし、入社を検討するスタートアップを厳密に評価することで、この認識に反する結果が得られる可能性があるとの見解を示した。特に、優れたチーム、顧客からの高い評価、急速な成長といった要素に加えて、企業が「堀」を持っているかが重要な評価基準であるという。

AI時代の到来により、製品開発はかつてないほど容易かつ迅速になり、多くの企業が類似の製品を開発している現状がある。このような環境下で、長期的な成功を収める企業は限られるため、「堀」の重要性が増しているとホッケンマイヤー氏は述べている。

提示されたフレームワークは3つのステップで構成される。まず、企業が潜在的に持ちうる「複合的な優位性」を特定すること。次に、その優位性がどの程度強力になりうるかを評価すること。最後に、その優位性が実際に機能しているかを測定することである。これらのステップを実践することで、成功するスタートアップを見極める確率を高め、競争から脱落するリスクを回避できると説明されている。

「複合的な優位性」として、以下の4つの要素が挙げられている。

  1. スイッチングコスト (Switching costs): 顧客が製品を深く組み込んで利用しているほど、他の製品への切り替えが困難になる特性。これにより顧客維持率と顧客あたりの収益が増加し、製品への再投資が可能となる。
  2. ネットワーク効果 (Network effects): 製品の利用者が増えるほど、その製品の価値が全ての利用者にとって向上する特性。これによりエンゲージメントが高まり、さらなる利用者の獲得につながる。
  3. 規模の経済 (Scale economies): 企業が扱う量が増加するほど、オペレーションが大規模かつ効率的になる特性。これにより単位コストが削減され、低価格化や同価格での製品改善が可能となり、さらに利用量を増加させる。
  4. データ効果 (Data effects): 製品の利用が増加するほど、より多くのデータが生成される特性。このデータは製品改善に利用され、さらなる利用増加を促進する。

一般的に「堀」として言及される「実行速度」「流通」「ブランド」については、これらはスタートアップにとって重要ではあるものの、それ自体が長期的な「複合的な優位性」にはならないと分析している。これらの要素は、車を正しい方向に動かすための「燃料」のようなものであり、企業が自律的に成長する「複合的な優位性」とは異なるとの見方を示した。例えば、ブランドはコカ・コーラ (Coke)、ナイキ (Nike)、Apple のように真の複合的優位性になり得るが、ほとんどのスタートアップにとっては長期的な競争を阻む効果を発揮するには時間がかかりすぎると説明している。

複合的な優位性を特定するためには、企業が「何を語っているか」や「戦略」ではなく、「実際に何を行っているか」に焦点を当てるべきだとしている。具体的には、チームが日々何に取り組んでいるか、ロードマップに何が記載されているか、そして社内でどのチームが大きく影響力を持っているかといった点に着目することを推奨している。この優位性は事業の中心にある核となるループであり、顧客により多くの価値を付加するプロセスを通じて防御性が副産物として現れるものだとしている。


参考: Lenny’s Newsletter (アーカイブ) — 2026年10月13日 21:45 (JST)

原文ハイライト

"There are only four compounding advantages that really matter."

この記事をシェア
X はてブ LinkedIn