セキュリティ研究者のマシュー・グリーン (Matthew Green) 氏は10月9日(現地時間)、急速なAIの進化が既存の公開鍵暗号アルゴリズムに対する信頼を機能的に失わせる可能性について、深刻な懸念を表明した。同氏は、AIの予期せぬ進展の速度と、人間社会が新たな暗号標準を策定し導入する速度との間の隔たりに言及。この速度差が将来的なデジタルセキュリティを脅かす潜在的リスクとして、専門家の間で注目されている。
セキュリティ研究者のマシュー・グリーン (Matthew Green) 氏は10月9日(現地時間)、自身のX(旧Twitter)アカウントで、AIの驚異的な進歩速度と、人間が暗号標準を置き換える速度との不均衡に警鐘を鳴らした。この発言は同日、Simon Willison’s Weblogによって報じられ、広く共有された。
グリーン氏は、自身の懸念を具体的な確率を交えて提示している。同氏によれば、公開鍵暗号が不可能であるとされる仮説上の世界ミニクリプト (Minicrypt) が実際に存在する可能性は1%だという。さらに、AIの進展によって、既存の公開鍵暗号アルゴリズムに対する信頼を機能的に失う可能性が15%に上るとの見方を示し、その蓋然性の高さに注意を促した。
ミニクリプトは、コンピュータ科学者ラッセル・インパグリアッツォ (Russell Impagliazzo) 氏によって提唱された概念である。Simon Willison’s Weblogの記述によると、これは特定の条件下で公開鍵暗号が成立しない世界を想定している。グリーン氏がこの概念を引用した背景には、AIが将来的に従来の暗号技術の根幹を揺るがしかねないという深い懸念がある。
グリーン氏は、AIの進化が既存の暗号技術に与える影響は、人間の標準化プロセスや適応能力をはるかに超える速度で進行していると強調。このような急速な技術変化に対し、社会全体が適切な対応を取るためには、事前の準備と継続的な研究が不可欠であると訴えている。同氏の指摘は、デジタル社会の基盤を支える暗号技術の未来に対し、改めて真剣な議論を促すものとなっている。
参考: Simon Willison’s Weblog (アーカイブ) — 2026年10月10日 00:02 (JST)