サイモン・ウィリソン氏 (Simon Willison) は2026年5月6日(現地時間)、自身のブログ記事でAI支援プログラミング手法に関する考察を発表した。同氏は、以前明確に区別していた「vibe coding」と「agentic engineering」という二つのAI活用プログラミング手法の境界線が、自身の業務において曖昧になっているとの認識を示している。この考察は、HeavybitのHigh Leverage podcastでの発言に基づいている。

ウィリソン氏がHeavybitのHigh Leverage podcastでジョセフ・ラスシオ氏 (Joseph Ruscio) とAIを活用したコーディングツールについて議論した際、個人的な作業において「vibe coding」とagentic engineeringが収束し始めているという認識に至ったと述べている。

「vibe coding」は、コードを全く見ず、プログラミング知識がないユーザーが「動けばよし」としてツールを利用する手法であると定義されていた。これに対しagentic engineeringは、プロのソフトウェアエンジニアがセキュリティ、保守性、運用、パフォーマンスなどを考慮し、自身の25年の経験を活かしてツールを最大限に活用し、高品質なプロダクションシステムを構築する手法として区別されていた。

しかし、コーディングエージェントの信頼性が向上するにつれて、ウィリソン氏は自身のプロダクションレベルの作業においても、エージェントが生成したコードの全ての行をレビューしなくなっているという。例えば、クロード・コード (Claude Code) がJSON APIエンドポイントを正確に構築するような事例を挙げている。これは、ウィリソン氏がかつてエンジニアリングマネージャーとして大規模組織で働いた経験において、他チームが開発したサービスをコード全体をレビューせずに信頼し、そのドキュメントに基づいて利用していた状況に似ていると説明した。

エージェントには人間のような専門的な評判や責任はないものの、繰り返し正しいコードを生成する実績から、エージェントを準ブラックボックスとして扱うようになっているとウィリソン氏は指摘する。また、GitHubリポジトリの品質評価についても言及。以前はコミット数やテストによって品質を判断できたが、生成ツールが短時間でこれらを作成できるため、外見からはその質を判断することが難しくなっていると述べた。

ウィリソン氏がこうした状況でより価値を置くのは、ツールが生成したコードが実際に日常的に使用された実績であるとしている。コードの生産性が劇的に向上したことで、ソフトウェア開発ライフサイクル全体、特にデザインプロセスにおけるボトルネックが変化している可能性も示唆。アンソロピック (Anthropic) のデザインリーダーであるジェニー・ウェン氏 (Jenny Wen) の講演を引用し、エンジニアリングコストが高かった時代には精密な設計プロセスが必要だったが、ビルドコストが下がれば設計におけるリスク許容度も高まる可能性があるとの見方を示した。

自身のキャリアへの不安については、エージェントとの対話が多くの人にとって理解困難な「moon language」であることから、AIツールは既存の経験を持つエンジニアにとっての「増幅器」となるとの見解を示した。ソフトウェア開発は依然として非常に困難な作業であり、AIツールがあってもその本質的な難しさは変わらないと述べている。


参考: Simon Willison’s Weblog — 2026年5月6日 23:24 (JST)

原文ハイライト

"Vibe coding and agentic engineering are getting closer than I’d like"

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