ヴァーセルは2026年5月7日(現地時間)、同社の「Chat SDK」に会話履歴機能を追加したと発表した。新しい「transcripts」と「identity」オプションを通じて、ユーザーのメッセージ履歴をあらゆるプラットフォームアダプターを横断して保持し、クロスプラットフォームでの一貫した会話体験を提供する。これにより、開発者は、ユーザーがどのボットやデバイスとやり取りしても、その履歴を継続して利用できる、よりパーソナライズされたアプリケーションを構築できるようになる。
Vercel は、開発者が高度なチャットインターフェースを迅速に構築できるようにするChat SDKの重要なアップデートを発表した。このアップデートにより、ユーザーとの対話履歴を永続的に保持し、さまざまなプラットフォームやデバイス間で一貫したユーザー体験を提供することが可能になった。従来のチャットアプリケーションでは、セッションが終了すると会話履歴が失われることが一般的であったが、今回の新機能はこの課題を解決し、より自然で連続的なユーザーとのインタラクションをサポートする。
新機能の中心となるのは、identityとtranscriptsという二つのオプションである。identityオプションは、会話に参加するユーザーを一意に識別するための基盤となる。開発者は、author.emailやuserIdといった特定の情報を用いてユーザーを特定し、そのユーザーに紐づく会話履歴を正確に管理できるようになる。これにより、たとえユーザーが異なるデバイスやブラウザからアクセスした場合でも、過去の対話を継続することが可能となり、よりパーソナライズされた応答やサービス提供に繋がる。
一方、transcriptsオプションは、メッセージの保持期間や各ユーザーが持つことができる最大メッセージ数といった、会話履歴の具体的な保存ポリシーを開発者が柔軟に設定できるようにする。例えば、メッセージを30日間保持したり、ユーザーごとに最大200件のメッセージを保存したりといった設定が可能である。この柔軟性により、開発者はデータプライバシー規制への対応や、ストレージコストの管理、そしてアプリケーションの要件に合わせた最適な履歴管理戦略を実装できる。
この新機能は、既存のstate adapterを基盤としており、bot.transcriptsを通じて以下の4つのメソッドを開発者に公開している。これらのメソッドは、会話履歴をプログラム的に管理するための強力なツールを提供する。
append: 受信したユーザーメッセージやボットからの返信を永続的なストレージに保存する。これにより、会話の各ステップが確実に記録される。list: 特定のユーザーに紐づく会話エントリを、フィルターを適用しつつ時系列順に取得する。これにより、特定の期間の履歴や、特定のキーワードを含む対話の抽出などが可能となる。count: 特定のユーザーに対して現在保存されている会話エントリの合計数を返す。この機能は、履歴の量に基づいてUIの表示を調整したり、データ管理の意思決定に役立てたりする際に有用である。delete: 特定のユーザーに関連するすべての会話エントリを削除する。ユーザーからのデータ削除要求に応じる場合や、プライバシーポリシーに基づくデータ保持期間の終了時に利用される。
Vercel は、このChat SDKの新機能に関する詳細な情報と、開発者がすぐに利用を開始できるための手順を公式ドキュメンテーションで提供している。また、実際の利用例を示すテンプレートも公開されており、開発者はこれらのリソースを活用することで、効率的に会話履歴機能を自身のアプリケーションに統合し、ユーザー体験の向上を図ることができる。クロスプラットフォームでの一貫した会話履歴の提供は、ユーザーエンゲージメントを深化させ、より複雑でインテリジェントなチャットアプリケーションの実現を可能にする。
参考: Vercel Blog (アーカイブ) — 2026年5月8日 09:00 (JST)
原文ハイライト"Chat SDK now supports conversation history"